卒業生集まる「卒業後の道を探る。」[後編]

座談会

開催情報

日時

2025年9月7日

場所

オンデザインパートナーズ

概要

54期卒5人による座談会を開催しました。
学生時代よりコンペ活動などをともにしてきた仲間が集まり、なぜ今の事務所を選んだのか。建築設計・ランドスケープ・土木・内装・まちづくりなど、多様なメンバーが集まり、学生時代の考えとともに語ります。

※前編は会報フォルマ・フォロ vol.23に掲載されています。

参加メンバー ※(内)文章内名前省略
・岩穴口 颯音 [54期] 株式会社オンデザインパートナーズ 2023年 高橋スタジオ 修了
・大西 加那子 [54期] 株式会社設計領域 2021年 長谷川スタジオ 卒業
・西津 尚紀  [54期] 株式会社乃村工藝社 2023年 布施スタジオ 修了
・長谷川 ゆい [54期] オンサイト計画設計事務所 2023年 長谷川スタジオ 修了
・三原 陽莉  [54期] 藤本壮介建築設計事務所 2023年 高橋スタジオ 修了

レポート

 

Q.2_なぜ今の事務所に?

 

[岩穴口]今はどんなプロジェクトを担当してますか?

 

[三原]今は瀬戸内海に、島のように浮かぶホテルの計画を担当しています。

 

[全員]島!?

 

[三原]瀬戸内デザイン会議に藤本さんがゲストで招かれた際に海島と言うプロジェクトが生まれました。造船会社さんと一緒に進めています。

 

[岩穴口]かなり長いプロジェクトになりそうだね。ちなみに森美術館の展示も担当していると思うけどそれはどれくらいかかっているの?

 

[三原]プロジェクト自体は2年前くらいから進んでいて、私は昨年(2024年)の冬頃から担当に入り、展示が始まったと言う感じです。

 

[全員]お疲れ様です!

 

[岩穴口]西津はどうして乃村工藝社を選んだの?内装設計の世界は比較的このメンバーの中では、仕事の進みが早いかなと思うけどどう?

 

[西津]乃村工藝社は先輩に教えてもらいました。造作家具や照明など、プロダクトまでこだわって設計できることと、短いスパンで色々なプロジェクトに関われると思い内装設計を選びました。ですが、実際は僕が担当しているプロジェクトは2年ぐらいはかかり、長いものだと5・6年はかかります。毎年行われる展示会のデザインを担当している人は、終了後すぐに翌年の準備が始まるので、商環境系・展示系・博物館系など、所属部署によって仕事のスパンは大きく変わってきます。

 

[大西]岩穴口君はどう言う経緯ですか?

 

[岩穴口]僕はエリアマネジメント活動を行う地域拠点に関わる機会があり、その重要性を感じていました。オンデザインは建築の設計だけではなく運営にも関わるプロジェクトが多く、いいなと思っていました。また、スタッフの中には地元に戻り軸足をおきながらリモートでオンデザインの仕事をしている人がいたり、自由研究という制度を利用して自分の活動にも時間を使うことができたりなど、多様な働き方にも惹かれて入社しました。

 

[全員]珍しいシステム!

 

[長谷川]私は長谷川スタジオからオンサイトに入ってます。経緯を追って話すと、大学受験の時からランドスケープには興味があり、長谷川先生のいる武蔵美を選びました。建築ももちろん楽しかったですが、ランドスケープを学ぶために武蔵美にいたので、長谷川先生のスタジオに入りました。大学院まで長谷川先生の元で学び、就職のタイミングでお声かけいただき、現在にいたります。

 

[岩穴口]大西さんも長谷川スタジオですが、スタジオを選ぶきっかけは何かありましたか?

 

[大西]私は先輩からランドスケープの話を聞いて知り、プレゼンテーションや模型に惹かれて選びました。

 

[岩穴口]武蔵美だと模型に惹かれることは比較的多い気がするね。

 
 

Q.3_事務所の規模感と働き方

 

[岩穴口]普段何人ぐらいで、どのように設計をしてますか?

 

[三原]藤本事務所はチームで分かれて設計をしています。最初のアイディア出しの段階だと、年次関係なく、全員アイディアを出し、議論をし藤本さんに持っていきます。自分の案が採用されることもあります。

 

[岩穴口]それはかなり良い制度だね。この規模で全部チェックしているのはすごいね。

 

[三原]スタディーでVRを使うこともあります。ちなみに森美術館での展示の一つ目の部屋の、模型や写真を沢山展示していたところは、3D専門チームとも協力して、1200個くらいの模型をほぼ全てモデリングして配置をVRで検討しました。

 

[全員]えぇ!すごい!。

 

[西津]乃村工藝社では、手触りや空間の空気感・ストーリー性に直結するマテリアルの知識が大事にされています。新たな素材・納まりの探求はもちろん、些細なことでも打ち合わせをしています。直接工場に伺い、職人の方々とスタディーを重ねるため、扱う素材に関しての解像度がかなり高くなります。

 

※プロジェクトのために作ったマテリアルボード

 
 

[大西]設計領域はトップのひとりは建築、ひとりは景観を専門としていて、お互いに異なる分野を受け持っているため、それぞれ進め方は違いますが、両方の分野が一緒になって設計することもあります。みんなでアイディアを出す場合ももちろんありますが、事務所のデザインとして出す時に、そこに自分の意思を入れ込むのは手探りです。事務所毎にやり方は様々ですね。

 

[岩穴口]西津の乃村工藝社は大人数だと思うんですがどうですか。

 

[西津]乃村工藝社には部署がいくつかあります。営業・施工管理・デザイナー・プランナーに分かれており、デザイナーでも本社だけで300人ぐらいいるので、海外支社や子会社を含めると2000人ぐらいかと思います。もっと多いかもしれませんが笑

 

[全員]規模が違う笑

 

[西津]また、乃村工藝社では一般的に言われる「課」と言う単位を「ルーム」と呼んでおり、約5〜10人程度で構成されています。ルーム毎に専門分野や設計思想に特徴があるので、複数の個人アトリエが集まってる感じです。

 

[岩穴口]建築設計と内装設計で違うところって何かありますか?

 

[西津]基本的には階数毎に設計が完結するので、図面としては平面・展開が基本です。模型を作ることはなく、3Dモデルでスタディーをしていきます。そこは大きく違うかも。また、僕のルームは映画の絵コンテみたいに絵を描いて設計を進めていて、例えばとあるレジデンスの設計では、ペルソナを想定して1日の過ごし方のシーンを描き、その積み重ねと平面図を行き来しながら設計しました。なので絵がスタディの共通のツールとしてあり、模型の代わりみたいな役割にいます。最終的にはプレゼンに向けて説明できる言葉にしますが、感覚的にデザインをしたい人などには向いてるかもしれません。

 

[岩穴口]内装設計の強みでもある、過ごし方への解像度に対しては凄く有効的なスタディ方法な気がするね。ランドスケープや土木・景観という分野は何を意識してプロジェクトを進めてますか?

 

[長谷川]ランドスケープの場合は大きい方向性をまずは定めないと、細々した空間の集積になってしまい、全体としてまとまりがなくなってしまうのでそのあたりは気をつけています。

 

[大西]土木は「活用を前提に空間をフラットに整える」という、ある種のスタンダードな考え方が通底しています。立体的な造形よりも、平面上の構成や動線計画に多くの工数をかける点は、内装設計に近い部分もあるかもしれません。また、私たちの仕事は事業化に向けた助言などアドバイザー的な立場で関わることもあります。土木デザインは、高度経済成長期の「作れればいい」「強ければいい」ものづくりへの反省から生まれた分野であり、いきなり形から入るのではなく、まずは問題意識の前提を組み立てる必要があり、そういった前提に興味がある人は向いていると思います。

 

[岩穴口]オンサイトはどういう感じでプロジェクトを進めてますか?

 

[長谷川]オンサイトではプロジェクト毎にチームを組み仕事をしています。なので、プロジェクト毎に進め方にも個性が出ます。私が担当している岩手県の廃校になった小学校活用のプロジェクトでは、周辺の地形、畑の大きさをリサーチし、その地形を小学校の校庭に取り戻し、「農」をテーマに場を設計しました。クライアントの持っている考えに対して、ランドスケープとしてどう応えていくか考え、上司に先導してもらいつつ、チームメンバーみんなでスケッチを描き、案を出しあって検討します。

 

[岩穴口]ランドスケープという分野に関してもう少し聞いても良いですか?

 

[長谷川]ランドスケープと造園の違いについて説明するのがわかりやすいかなと思うけど、ランドスケープは、マスタープランや、大枠の設計から始まり、それを敷地に落としていく中で、建築の位置や、植栽計画などをします。それに対し植物への解像度がより高く、庭などを作っているのが造園になります。

 

[大西]オンデザインはどういう感じですか?

 

[岩穴口]オンデザインもプロジェクト毎にチームを組みます。特徴的なのは、プロジェクトの地域に縁がある人を優先して入れます。僕も宮崎に縁があり宮崎の歴史資料館の設計を担当しています。そのプロジェクトでは、1週間現地滞在しながら仕事していた時があり、まちの人とワークショップなどで交流したりしていると、1週間後には挨拶できる人も増えました。そう言った関係作りから建築を作ることも重要視していると思います。

 
 

Q.4_学生時代の起点となった課題

 

[岩穴口]僕は2年生の集合住宅課題でクライマーのための集合住宅(#2)です。この作品では住む人をクライマーに限定しています。それによって建築がどう残っていくのかと言う話を考えた中で、そもそもの建築を作る上での過程にも興味が湧き始めました。それもあり、設計手法としてワークショップをよく行っているオンデザインにしたという経緯もあります。

 

#2「ずっとここにあったもの」

 
 

[大西]私は3年後期の長谷川先生の課題(#3)の時に講評で源先生から、都市における広場の機能や役割についてもっと多角的に考えた方が良いよと言われ、防災や催し・集会・デモなど、多様な使い方に応えられる余白を残す重要性に気が付きました。それはかなり土木デザインの本質を突く言葉だったなと思いました。

 

#3「地下がまちに顔を出す時」

 
 

[長谷川]私もそれを隣で聞いていて衝撃を受けた記憶がある笑。あまり作らないこともありえるのではという話もあり、すごく発見が多かった。私の中で一番覚えているのは、2年生の集合住宅課題(#4)です。登る動線に岡のようなものがあり、造成とか植物とか全て等価に設計していきました。それが自分の中でしっくりきた覚えがあります。

 

#4「三庭集合住宅」

 
 

[西津]僕は2年生の玉川上水の家の課題(#5)だと思います。ひとつの操作の積み重ねで空間を作って行ったのを覚えています。自分なりの設計のプロセスというか、設計の面白さみたいなものをつかめた課題でした。

 

#5「剥離」

 
 

[岩穴口]自問自答の中での発見と、他人の言葉からの発見、その行き来の頻度の多さが学生の環境として重要だね。

 

[三原]私は大学院に入ってから長谷川さんと住宅コンペ(#6)をやっていた時の経験が今に大きく活きています。2人で沢山会話しながら進めてて、時には関係ない話もしながら、そこから案が生まれていくのが凄く新鮮で楽しかったです。1人で考えるのが苦手なことに気が付いたし、今のチームでのブレストにも活きてます。

 
 

Q.5_学生時代の活動

 

[岩穴口]最後に、今に活きている学生時代の活動等はありますか?僕は学外のワークショップ活動等でできた繋がりが今も大きく活きています。思い出としては学部時代のアトリエグループ(自主製作やコンペへの応募を行っていたグループ)での活動が思い出深いです。

 

[大西]私も一回呼ばれてコンペ一緒にやったことある笑。

 

[西津]懐かしいね!学校以外で集まったり、雑談したりする場所は凄く良かった。後は春休みとかにコンペに挑戦したりして、頭が鈍らないように色々活動していたね。

 

[三原]私はさっきの住宅コンペ案の実寸での展示(#7)かな。あの時は資金調達も自分たちでやっていて、スケジュール管理も重要でした。今の実務にも、多少ながら活きている気がします。

 

#7「UBUNTU-小さなまち、大きな家-「家とは何か?」1/1展示」

 
 

[大西]学生時代と実務とでは、評価される能力は全然違うこともあるから、働いてみないとわからないよね。

 

[岩穴口]確かに!何がためになるかなんてわからなかったし、学生時代の活動で損したことなんて何もない、振り返ると貴重な体験は沢山していたね!

 

[全員]何も悔いはない!笑。

 
 

ー終わりー

 
 

#2「ずっとここにあったもの」 2018年度2年前期課題 [参考作品][スプリング賞]岩穴口 颯音
#3「地下がまちに顔を出す時」 2019年度3年後期課題 [参考作品]大西 加那子
#4「三庭集合住宅」 2018年度2年前期課題 [参考作品]長谷川ゆい
#5「剥離」 2018年度2年前期課題 [参考作品]西津 尚紀
#6「UBUNTU(ウブントゥ) – 小さなまち、大きな家-」第13回ハーフェレ 学生デザインコンペティション2021[最優秀賞]三原 陽莉 ・ 長谷川 ゆい共同制作
#7「UBUNTU-小さなまち、大きな家-「家とは何か?」1/1展示」三原 陽莉 ・ 長谷川 ゆい共同企画