第27回 日月会建築賞
2025年度
開催情報
開催日
2025年7月13日(日)
審査員
審査委員長
| 田中 善之 | 19期/オークヴィレッジ株式会社 所属・第9回「長尾重武賞」受賞 |
|---|
審査員
| 原田 将史 | 35期/ニジアーキテクツ一級建築士事務所 共同主宰 |
|---|---|
| 下田 直彦 | 47期/カナバカリズ 共同主宰 |
| 二又 大瑚 | 56期/ムトカ建築事務所 所属 |
太陽賞受賞作品
ハイジャック
塩飽 周歩
受賞のコメント
有意義な機会を与えてくださりお忙しい中ありがとうございました。いかにして不確かな感覚から建築が立ち上がるのか、という自分の興味をひたすら形として試行錯誤しました。これからは形式やプランへの思考を深く突き詰めていきたいと思います。


満月賞受賞作品
MAU P³ Hall
冨士本 峻
受賞のコメント
審査員の方々からはそれぞれの視点で多様なご指摘を頂けたのですが、それらの中に共通した、根本的な問題点や課題を見いだせた気がします。今回の課題では敷地の現状を読み解き、建築のソフト面からのアプローチを重視しましたが、コツコツ積み上げていく手法は細部まで論理的に説明できる一方で、直感的な衝戟を生みづらいと痛感しました。これからも学生の設計課題という自由な実践の場を最大限活用して、人の直感に訴える衝戟を追求していきたいと思います。



三日月賞受賞作品
軸線現し
森北 智巳
受賞のコメント
昨年度に引き続きこのような賞をいただき、大変光栄です。
本設計は、社会において現在進行形で顕になってきた問題を扱いながら、普遍的な手法で独自の景色を作ることを目指しました。
対面形式に戻った日月会の場で先輩方にいただいた言葉ひとつひとつを糧に、今まで以上に精進いたします。
また持田教授、平井先生はじめ課題に際しお世話になった皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。



新月賞受賞作品
絲滴の間
濵田 史月
受賞のコメント
審査員・OBの方々、オープンキャンパスに訪れた方とお話ができて、多くの人との交流はとても貴重な経験になりました。
1/1スケールの制作を通して材料について考えながら、自分の感覚を改めたいとの思いから今回の作品を制作しました。その中で、このような賞を頂けたこと非常に嬉しく思います。ありがとうございました。


七夕賞受賞作品
段々
松本 愛佳
受賞のコメント
この度は貴重な機会を設けてくださり、ありがとうございます。
今回は参加することだけに意義を見出しておりましたが、思いもかけずご評価頂いたことに感謝すると共に、心から嬉しく思います。
また、プレゼンを重ねることでの気づきや、頂いたアドバイスからも多くを学ぶことができました。
今回の経験を糧に自らを研鑽して参りたいと思います。

審査員評
審査委員:原田 将史
(35期・ニジアーキテクツ一級建築士事務所 共同主宰)
事務所を設立して間もない2014年(第16回)以来11年ぶりの審査員でした。私自身も建築家として少しは成長したかと思いますので、見方も変わったと思います。
当時は東日本大震災後の社会状況の変化と共に建築を取り巻く状況の変化を感じましたが、今回はさらにコロナ禍を経て学生たちの心理的状況の変化を感じたように思います。
1年生の「200㎥の家」は、正直1年生の前期課題にしてはかなりクオリティの高い作品が多く大変驚きました。
したがって1次審査の際には無意識にレベルの高い指摘をしてしまったようにも思いますが、実は今の時点ではもう十分なくらいで高望みしすぎだったかもしれません。
それだけ、将来のポテンシャルが高いということでもあると思いますので、皆さんの今後に期待したいと思います。
2年生の「緑道とまちなかに接する家」と「小規模集合住居」は、空間の可能性にチャレンジしている作品が多くあり、模型やドローイングを見て想像するだけで大変楽しませて頂きました。
佐藤樹一朗さんの「ドミノ」は、一見「九龍城砦」的な姿をしてますが、個々のボリュームは整った形とし、隙間を空けて並べられています。そこに無作為ではない意図した密集住居の可能性を感じました。
中根光さんの「obey」は、作り出している内部空間とそれを表現しているドローイングたちがとても詩的で、造形力の高さも相まって作品の空間に引き込まれるものがありました。同じ細長い空間が連続している構成ですので、長さを少しずつ変えるなどして変化を与えるとより魅力が増すように思いました。
東舘燦さんの「1と10」は、細長いリニアな住戸を積層させVの時に配置した建物が、中庭のプライベート感と開放感を両立しているように感じました。また、特徴的な住戸内部も細長さの中に新たな住まい方が生まれる予感を抱きました。
1・2年生は全体的に内なる世界感を建築空間として表現している作品が多かったように思います。
課題自体がその方向に誘導するような内容でもあったかと思いますが、昔からムサビの学生はその範囲は得意な方が多いと思います。
実際の建築は内と外どちらの世界も同時に広く考察し、表現する必要があります。
内なる世界をより一層広げる努力と外への視点も意識できるようになるとより豊かな建築を創造できるようになると思います。
3年生はどのスタジオも出題者の意欲的な課題となっており、学生はその想いを汲み取りどれだけ応えられるかがポイントだったように思います。
牧野花菜さんの「SOUSOU57」は、課題で求められているストリートカルチャーとラグジュアリーという相反する要素を両方とも見捨てずに上手く取り込んで建築として表現が出来ていたと思います。ストリートカルチャーからラグジュアリーへの連続性を感じることが出来ました。
中畝遥香さんの「流れる居場所」は、都市の新しい広場になりえそうな期待感を抱かせてくれました。日本にはあまり居心地の良い広場や楽しい駐輪場がありませんが、この作品の様な立体駐輪場広場は実現させても良い様に思います。
森北智巳さんの「軸線現し」は、個人的にとても好みの建築で、構造計画がしっかりと考えられている薄いスラブの大らかかつ優雅で流れる空間が、風景に溶け込みながらもその場の質をガラッと変えてくれる可能性を秘めていると感じました。小手先の操作ではない大きな建築による場の変容が想像するだけでワクワクしてきます。
濵田史月さんの「絲滴の間」は、この素材をよく発見したなと感心しました。展示でのデモンストレーションや映像や写真、絲が纏まった現物を見ると様々な可能性を感じ、あれに絡ませてみてはどうかとか対象物を動かしてみてはどうかとか色々な想像するだけで楽しくなりました。今後是非とも空間へ昇華させてもらえると良いかと思います。
審査会後の懇親会では学生たちと話ができ、学生同士が日常的に建築の議論を行い、お互いの建築的個性を理解しているのが感じ取れました。また、個々の建築への熱い想いも感じることが出来、情熱だけで建築をやってきた私としてはとても嬉しく思いました。
昔から、独自の世界感と造形力、そしてそれらの表現力に長けているのがムサビ建築の特徴であると認識しています。
一時期その特徴が弱まってきたこともありましたが、今回の審査は復興の兆しを感じる機会となりました。
躊躇せず、どんどん手を動かして建築を考え表現し続けましょう!
審査委員:下田 直彦(47期・カナバカリズ 共同主宰)
多くの学生が積極的に参加し、同時に、一人あたりのプレゼン時間が比較的短い中で、それぞれがしっかりと自身の作品を伝えようと懸命にプレゼンされている様子がとても印象的でした。そのなかでも、今回受賞された方々は自身がやりたいこと/プレゼンス/立ち位置を明確に表明していた方々のような気がします。懸命に課題と向き合い、なにより自身と向き合った様子が感じられました。「自身が何をやりたいのか」ということを明確に意識・整理することは非常に難しい作業です。拙速に整理すれば自身の首をしめることにもなりかねないので、課題に取り組む中でじっくりと掘り下げていくよりないでしょう。そういう意味で、ムサビ建築学科の、物と対話し・手で考える特色は、その掘り下げの作業環境として理想的に思えています。
一年生の課題「200㎥の家」は、課題が”平米”ではなく”立米”であるゆえか、平面計画よりは立体的な造形への興味関心が強く感じられました。そのなかでも「まちに溶ける・まちを裂く」という作品からは、まだ充分に言語化されていないものの、「まち」への応答や批評的視点の萌芽のようなものが感じられ、その佇まいが印象的でした。
二年生の集住課題は、一年生課題よりさらに実践的に展開した印象で、より高度で密度・バリエーションのある展開が見られました。唯一住宅の課題で出品されていた「Marshmallow day」という作品は、自身を掘り下げるだけでなく、その建物に関わる他者も含めて掘り下げていこうという展開の気配が感じられ印象に残っています。
三年生の各課題は、実践的かつ場所・土地・文化・歴史への批評性が求められる、より一層高度な課題でしたが、各人の興味関心・個性をしっかりと表に出しながら、それらを作品としてまとめていく力強さを感じました。その中でも「SOUSOU57」という作品は、土地・文化あるいは課題そのものへの応答が感じられるものとして印象に残っています。
個人的には、建築は人と人との間に建つものだと思っていますので、自身を掘り下げるとともに他者への視線・他者からの視線といった、より広がりを持った展開が期待できました。とはいえこれは私自身の課題でもあり、みなさんと一緒に成長していく決意を改めて得る貴重な機会となりました。