18回 日月会建築賞

2016年度

開催情報

開催日

2016年7月9日(土)

審査員

審査委員長

七田 紹匡 21期/自給自足家(エコヴィレッジみより)

審査員

黒田 和司 17期/ (有)NEU総合計画事務所 主宰
浅利 幸男 27期/ラブアーキテクチャー一級建築士事務所 主宰
佐々木 将 29期/㈱槇総合計画事務所 建築・都市設計 勤務
伊藤 友紀 40期/伊藤友紀建築研究所 主宰

エントリー作品数

40作品

エントリー課題

高橋・川口スタジオ: 連続課題「都市の環境単位 - 繋がる建築」
河野・原田スタジオ: 「鎌倉コンプレックス」
源・笹口スタジオ: 「建築のタッチ - くにたち美術館」
鈴木・常山スタジオ: 「身の丈の家」

太陽賞受賞作品

RHYTHM

渡邉 和 (源・笹口スタジオ)

受賞のコメント

この度は、とても良い経験となる場を用意していただき、また太陽賞をいただけたこと、とても嬉しく思っています。有り難うございました。今回の課題は、自分の中でずっとあった考えをかたちにする事を目指し取り組みました。現代の美術館建築における展示空間の在り方を自分なりに再解釈し、それが一つのかたちとして評価していただいた事をとてもうれしく思います。今回のこの賞を自信とし、これからも精一杯精進していきたいと思います。有り難うございました。

審査委員長からの講評

タッチというテーマに独自の哲学的解釈を与えていて、その説明は覚えていないのだけど、その解釈を導き出した事によって彼の内部に生じた熱量が作品からほとばしり出ている。このテーマを核に第一課題、第二課題へと愚直に誠実に熱を込めて取り組んでいる姿に感銘を受けた。

満月賞受賞作品

丘の下の美術館

伊藤 愛希 (源・笹口スタジオ)

受賞のコメント

この度は、満月賞をいただいた事、とても嬉しく思います。また、懇親会でも歴代の卒業生の方々とお話できて良い経験をさせていただきました。この度はこのような経験が出来る場を用意していただき、ありがとうございます。
今回の設計では「身近にアートが有る作品を想像させる空間の提供・タッチという技法を使って建築をつくる」という課題に対し、第一にホワイトキューブと広場と路地的スケール、この3つの展示空間を連続的に体験する事によって身近な生活にアートが有る事を想像させる空間を提供できないかということ。第二にタッチの定義を対象物に五感で触れることとし、タッチに至るまでの過程を欠落させていく作業により、より強いタッチを得られないかということ。以上の二点から設計しました。
建築を続けていくか迷っていましたが、今後も設計を続けていこうと思えるきっかけになりました。まだ解ききれなかった部分や出来なかった部分は、今後の伸びしろと捉え、精進していこうと思います。ありがとうございました。

審査委員長からの講評

丘の下の美術館これもタッチという本来即物的な言葉を抽象的にとらえたアプローチだったと思う。
太陽賞の作品の有無を言わせぬソリッドな存在感とは対照的に、空間計画の面白さが評価されたと思う。公園の日常的な風景の中にモニュメンタルな形態ではなく、利用者の行動を促す装置としての建築のあり方を探っている。

三日月賞受賞作品

記憶の重層

重名 秀則 (源・笹口スタジオ)

受賞のコメント

今回「建築のタッチ」という課題に対して、私は「記憶」という内面的なテーマを掲げて設計課題に取り組みました。そのため、設計趣旨を説明することが重要になる作品であると認識していました。日月会建築賞を通して毎回初めて会う方に一人一人プレゼンをして、たくさんの意見いただいたことはプレゼンが苦手な自分にとても良い経験になりました。この経験を忘れずに今後の設計に活かしていきたいです。ありがとうございました。

審査委員長からの講評

記憶の重層設計計画以前に、敷地のコンテクストの調査分析に対する誠心的な仕事量、加えて第一、第二課題を通して妥協のない密度高い制作意欲。旧国立駅舎の形態の記憶というシンプルなヒントを手がかりに、思考の痕跡を丁寧にプレゼンテーションしている点も見応えがあった。

新月賞受賞作品

距離感の積層

井出 彩乃 (高橋・川口スタジオ)

受賞のコメント

「プライベート」と「外部」が互いに心地よくつながる距離感とはどんなものなのか、また敷地である中野区の人口構成に着目し、この場に適応していく集合住宅をまっすぐに解くことを意識しました。
それは同時に挑戦でもありましたが、私の素直な設計を評価していただき、大変うれしく思います。同時にこの課題を今回だけで終わらせない、次の段階へと進めていけるアドバイスを様々な視点からいただくことができ、とてもいい経験となりました。今後もさらに設計のレベルを上げられるよう、努力を積み重ねていきます。ありがとうございました。

審査委員長からの講評

距離感の積層設計の意図がグラフィカルにセンスよく表現されていました。このまま実現して欲しいと
思わせる周到に考えられた空間構成。丁寧な仕事です。

七夕賞受賞作品

青空の家

松田 聖人 (高橋・川口スタジオ)

審査員評

審査委員長:七田 紹匡(21期・自給自足家)

いや?学生の皆さん気合入ってましたね。
折角審査委員長になったのでかつての自分みたいなダメなヤツもクローズアップしてあげたいと思ったんですが、そもそも学生時代の自分だったらこういう賞にエントリーさえしてなかったであろうことに気づきました。
ハハハ。

しっかし全く作業のベクトルの違う課題を同じ土俵に乗っけて優劣を付けるというのは実に悩ましい経験で、審査から10日も経った今でも全ての作品をもっと良く見て判断したかったと無念の思いでいます。結果的に源スタジオの課題が3賞を独占してしまったのは一見難解な出題者の要求を、学生が開き直って自分の問題意識に勝手に引き寄せることで逆に感情移入しやすかったという面があったかもしれません。個人的には「独立した存在としての、図面なり模型なりで示された建築のカタチで」はなく、第一課題・第二課題を通じて出題者の意図がどのように昇華して行ったのかが見て取れる作品をより高く評価したつもりです。

その点で、河野スタジオ「鎌倉コンプレックス」のような建築の用途を自ら設定する課題では設計の前段階として非常に緻密な作業が要求されていた筈ですが、それが建築へと繋がるプロセスがもっと表出されていたら良かったように思いました。

高橋スタジオの課題では(集合)住宅だけに完成度・密度の高い作品が多かったのですが、やはり住宅だけにパーソナルなストーリーに矮小化されやすいことが受賞に結び付きにくい要因であったように思います。「グラデーション」というテーマから自分なりに何となく想定していた物より作品の周辺環境や社会環境に浸潤する境域が小さかったような気がします。

自分の学生時代を棚に上げて言えば、どの課題もカタチを設計する以前に建築家という存在が備えていたい「眼」を養うためのプラクティスとなっている訳ですが、それぞれの課題の設定しているテーマが単なる設計の為のヒントくらいに捉えられている嫌いが無きにしもあらず。その点でテーマに誠実に取り組んだ作品が割と正しく評価されたものと思われます。

パネルを解読しただけでは分からなかった設計意図が口頭のプレゼンテーションを聞いて初めて理解できるケースが多々ありました。

手描きやレトラセットなどを使った手作業が主流だった30年前と比べると、グラフィックな見せ方が一様に格段にレベルアップしているのですが、それだけにコンテンツの編集能力、受け手の立場に立った情報伝達能力が要求される時代になっている事、そこに美大の建築学科ならではのプレゼンテーションの可能性を感じました。

審査会当日の様子

7月11日土曜日、13:00より20:00まで、第18回日月会賞審査会が開催されました。
エントリー作品数は40作品、昨年の38作を上回り、年々増加しています。
参加して下さった3年生の皆さん、長時間にわたり真剣に審査くださった審査委員の皆様、本当にありがとうございました。

 

3年生前期の課題は、源・笹口先生、河野・原田先生、高橋・川口先生、鈴木・常山先生の4スタジオです。
高橋スタジオは、連続課題「都市の環境単位 – 繋がる建築」
河野スタジオは、昨年に引き続き「鎌倉コンプレックス」
源スタジオは、「建築のタッチ – くにたち美術館」
鈴木スタジオは、1分の1断面を提出物とした「身の丈の家」
と、様々な課題が揃いました。

 

本年の審査員は、昨年の竹山賞受賞者の七田さんと、様々な世代の建築家の卒業生に集まって頂けました。

 

今年は、審査員の方は13時より審査開始しましたが、授業の関係でほとんどの学生が14:30からのプレゼとなりました。
今年の審査員の方たちは、事前によく課題の読み込みをして頂いており、学生が課題にどのように応えていったのかを先生のように丁寧に聞いて下さいました。思考過程の明瞭さ、自分のしたい事が如何に表現されてか、足りないところは何か・・・。学生全員のプレゼを聞きたいが、時間が足りない!!、審査員の皆さんもへとへとです。
15時を超える頃には、審査員以外の多くの先輩達もぞくぞくと参集、プレゼをする学生とそれに対し意見を戦わせる審査員の熱気で、ギャラリーは息苦しい状況に・・・。

学生が授業で不在のため
プレゼなしの作品鑑賞タイム

熱気溢れる会場、1次審査風景

40作品がエントリー
1次審査通過の12作品

1次審査は、純粋に投票の得票数で、上位12作品が選ばれました。
最初に、約2分各審査員の意気込みが示され、2次審査スタートです。
自らが推薦する作品の良い点を解説、選ばなかった作品の弱いところは何か、議論は白熱します。

2次公開審査風景

2次公開審査風景

 

今年は、スタジオ毎の課題自体の難易度の違いや、課題そのものの解釈の多様性にまで言及、出題教授に出題の意図を聞く場面もありました。

審査員に源先生回答する

審査会場学生

 

受賞者と受賞作品を発表します。

 

太陽賞:渡邊和「RHYTHM」

フォリーによる空間スタディーを、美術館の空間化につなげる明快さと作品のクオリティーから太陽賞に輝きました。

 

満月賞:伊藤愛希「丘の下の美術館」

丘の下という単純なアイデアの中に、住宅レベルのスケール感を持った空間を展開する展示スペースのあり方に、満月賞。

 

三日月賞:重名秀則「記憶の重層」

国立の調査から始まるレンガを通した物語に、構造や美術館空間の多様性まで建築化した力量に三日月賞。

 

新月賞:井手彩乃「距離感の積層」

審査員以外の当日参加の全卒業生の投票で決まる新月賞。集合住宅の明快な分析から空間構成、正当的設計手法とそれを着実に建築化した作品は、多くの表を集めた。

 

七夕賞:松田聖人「青空の家」

学生が学生にエールを送る、昨年の日月会賞受賞者による賞です。

 

七田審査員長による総評

 

表彰式では、もう一つの日月会賞として、2年生対象の明会賞の受賞式も行われました。

 

受賞されたみなさん、おめでとうございます。
審査員の皆様、お忙しい中そして蒸し暑い中での審議ありがとうございました。
執行部と研究室の日月会賞スタッフの皆さんお疲れさまでした。
雨の中かけつけてくださったOBの皆様、多くの皆様のお力で今年も無事に開催できましたことを心から感謝いたします。

年々エントリーが増え喜ばしいながらも、全作品のプレゼンを聴くのは時間的に厳しく、また今回、学生不在の時間帯ができてしまい、全員にプレゼを聴いてもらうことができかった学生も多かったようで、次回への課題が残されました。前年度の反省をふまえて、毎年審議の方法に改良をくわえ、進行はかなりスムーズになったものの、また新たな課題に直面しております。

大勢の方に作品のプレゼをし、講評をいただいた先輩の皆さまのお言葉ひとつひとつが学生の力となっているのを感じます。今後も一層のOB・OGのみなさまのご参加・協力をお願い申しあげます。