20回 日月会建築賞

2018年度

開催情報

開催日

2018年7月7日(土)

審査員

審査委員長

田村 恭意 28期/田村建築設計事務所 代表・2017年度 長尾賞 受賞

副審査委員長

井口 雄介 41期/アーティスト・2017年度 長尾賞 受賞

審査員

井上 搖子 11期/アトリエ ノット 代表
福岡 一郎 13期/福岡建設 代表
阪 健吉 20期/大林組 設計本部 建築設計部 部長

太陽賞受賞作品

波状摩天楼

塩澤 芳樹 (小西・奥野スタジオ)

受賞のコメント

この度はこのような大勢の方のご意見をいただける機会をいただき、ありがとうございました。今回の設計では高層ビルや大学キャンパスに対して自分が疑問に思っていたことを構造の面からアプローチすることで解き、拙い部分も多々ありましたが、このような形で評価されたことをうれしく思います。
今後は、今回評価されたことは長所として伸ばし、たりない部分は高めていくように努力していきたいです。ありがとうございました。

審査委員長からの講評

パスタのラザニアから発想を得たと言う作品。小西・奥野スタジオの課題は、ややもすると避けがちな構造設計というハードルを乗り越えれば、より実現出来そうな印象を与え、それが他のスタジオにくらべ、評価される作品が多くなった要因の1つかと思われる。その中でも特にリアリティーがあった。『上下階をつなげる』と言うコンセプトが明快に表現されており、構造計画、空間設計の面白さが評価につながった。

満月賞受賞作品

Aoyama park campus

近藤 明日香 (小西・奥野スタジオ)

受賞のコメント

集積する「ブレース構造」により、建物上にダイナミックな屋外空間「park」を持った「都市の公園」として生きる建築を設計しました。構造と意匠の相乗的な設計をするのは初めての取り組みで、挑戦心と学習意欲を掻き立てられる課題でした。日月会建築賞への参加を通して、多様な意見を頂くことが出来たことが一番の収穫です。今回頂いたアドバイスを元に、より一層設計の質を高めるべく邁進していく所存です。このような機会と賞を下さったことに深く感謝申し上げます。

審査委員長からの講評

自分が学生時代、課題で設計する時から心掛けていた事の中に、要求される諸室の他に、作品の中に少なくとも一ヶ所で良いから自分自身が居たい場所、住みたい場所、お薦めの場所を隠れツールとして設定していました。それを、私なら道路側のテラスと外階段に設定し、青山の眺めを愉しみ、上下階の気配を感じながら、しばらくゆっくりたたずみたいと思わせる、居心地の良さそうな作品。リズミカルで、メリハリのある造形が評価された。

三日月賞受賞作品

フラットコダイラ

鈴木・常山スタジオ2班 (鈴木・常山スタジオ)

受賞のコメント

この度は、すてきな賞をいただきありがとうございます。今回、グループワークで且つ多くの制限がある中での課題でした。各教授の方々のみでなく行政の方々からの貴重でリアルな意見も伺うことができ、とても良い経験となりました。大人数で実際にクライアントがいる中での課題はより実務に近いと感じたので、これからの設計にも生かしていきたいと思います。最後になりますが、このような機会を設けていただきありがとうございました。

審査委員長からの講評

外観の直線と曲線の組み合わせがおもしろく、ガラスという透明な素材、ルーバー・格子などあいまいな素材などで抜け感を調節しながら程よく空間をつなぐ。各階の中心に設けられたホールでの賑わいが期待できる作品。

新月賞受賞作品

ストライプに沿って滑りぬける。

武田 涼花 (源・笹口スタジオ)

受賞のコメント

この度は、栄えある新月賞に選んでいただき誠にありがとうございます。このよう栄誉は私には無縁のものであると考えていましたので、唯々驚いております。日月会は、勉強になっただけでなく、このように一度に大勢の方の建築に対する考え方や向かい方などを聞ける機会はなかなかないのでとても楽しい会であると感じました。この経験を今後の製作にも生かし、建築だけにこだわらず様々なことに挑戦していきたいです。

審査委員長からの講評

外壁に切取られた2ヶ所のアプローチに立つと、『その奥はどうなっているのか』興味をそそられつつ中にいざなわれると、シュールな空間構成が広がる。緊張感があり、繊細で美しい作品。

七夕賞受賞作品

あそびば

佐橋 飄 (源・笹口スタジオ)

受賞のコメント

この課題の敷地である「谷保第三公園」は、私が生まれ育った東京都国立市に実在する公園で、国立市民なら誰でもその存在を知っているほど浸透し、親しまれている場所です。そこに美術館を建てるというのは、個人的にかなり難しい挑戦でした。人生の半分以上を過ごしてきたこの街の体験が、思考の足枷になった部分も多分にありますが、熟知した場に建築するという、初めての感覚は非常に新鮮で楽しいものでした。これを糧に今後も、より精進していきたいと思います。

審査委員長からの講評

建物を地下に埋込む計画だが、全部埋めず、やや(確か1.5m位)地表から出し、グランドからの眺めは車などを見せず、桜だけ見えるように視線を意識したレベル設定が奥ゆかしい。空間構成や形態処理には荒削りながら、設計のセンスが読み取れ、今後の飛躍が期待できる作品。

審査員評

審査委員長:田村 恭意(28期・田村建築設計事務所 代表)

かつて学生時代の私は、諸先生諸先輩に建築やそれ以外を教わり、自分の実力以上に引き上げてもらったと自覚しています。そのような私が審査委員長の大役を勤めるにあたり、個人的な評価の方針は、文頭のように私が享受した事を鑑みて、今回を伸びるきっかけにし、今後飛躍出来そうな作品を評価しました。
そして私は教授・講師ではないので、優秀なものや、いわゆるうまくまとまっているものより、拙くもコンセプトを明快に表現しているもの。更には工学系ではなく美大で、しかもせっかくムサビで学んでいるので、場合によっては動線・グルーピングなど基本がまとまっていなくても、造形的に優れているものや、絵心が感じられるものを評価しました。また当日感じた事は、例えばリアリティーが足りなくても、それをカバーするコンセプトや表現力がある作品、言い換えると元気がある作品が私の学生時代より少なく感じました。

 

しかしながら、源・笹口スタジオの中に元気がある作品が比較的多くありました。『建築のタッチ』という課題は、自分の学生時代からあったような気がし、どこか懐かしく感じました。(4年間源先生に習い、4年生の時の助手が笹口さんだったからか・・・はたまたこれが「ムサビズム」の1つなのか)答えが有る様で無い様な、まるで禅問答のように難解な課題だが、期せずして、いつの間にか答えを導いてくれる摩訶不思議な課題と感じました。(答えは自分自身の中にあるのかも知れません・・・)

 

話を感想に戻すと、「繊細かつ大胆」と言われる様なものがなく、表現がややおとなしく感じました。実務の設計になると様々な制約・条件が加わり、独自の発想をし、それを表現するのが一段と難しくなります。
fine art程、自由ではないかも知れませんが、学生の内はもっと自由に伸び伸びと発想し、学生の時ならではの独自の価値観を育てられれば良いと思います。(実際に働いてそれが間違っている事に気付く事も重要です。)
その為に、色々なものを見聞するのは勿論の事、せっかくムサビにいるのであれば、(関連する課題もありましたが)サークル、研究会をはじめ、他の学科の人達と交流する事をお薦めし、「美大生」という貴重な時間を有効に使う事を願います。

 

この様な事を書いたのは、懇親会で学生の皆様から直に聞いた想いや悩みは、当時自分が感じていた事とさほど変わらず、私は他の学科の友人から刺激やヒントを得た事がたくさんあり、その経験を老婆心ながら書き加えました。
私を含め誰でも、どんな仕事でも、上達するには、研鑽を積むしかありません。
皆様の更なる活躍を願っております。

 


 

受賞作品以外に今後の更なる飛躍を期待する作品

 

KY03:松浦さん
うろ覚えだが、確か基本的に重要な動線がまとまっていなかったかと思うが、個人的には、絵心あふれるプレゼンに今後の更なる飛躍を期待してやまない。

 

KY08:前澤さん
かつて私が学生の時に似た様な計画を考えた記憶があり、好感を持った作品。
丁寧で繊細な仕事、絵心あるプレゼンに今後の飛躍を期待する。

 

MA05:藤田さん
寺社建築のような屋ダルミのある切妻屋根を、メインの構成要素とした作品。
評価は別になるが、一番印象に残っており、良い意味で一番『アク(灰汁)』が強い作品。

 

MA06:松井さん
地中に埋め込む計画。
計画、仕事、プレゼンに熱量があり、掲示の他に手持ちのボードでプレゼンを工夫していたのはとても良かった。

 

SA01:1班
大切な土地のコンテクストを積極的に残す計画に好感をもった。

 

MA09:大嶋さん
アウトプットしているものはとても良い。
あとほんの少し足りなかったものは何か・・・

 

その他に
SA03:5班
KY01:井上さん
MA07:山田さん
MA01:阿瀬さん
MA11:二木さん
KH01:渡邉さん
MA04:冨田さん
KY05:阿部さん

 


 

以前は無かった、この日月会建築賞に参加させて頂き、私自身とても貴重な経験が出来、大変勉強になりました。

 

主催の日月会の皆様、
諸先生・研究室の皆様、
審査員・OBOGの皆様、
タイムキーパーの4年生の皆様、
そして応募・参加して頂いた3年生の皆々様、
感謝、御礼申し上げます。

審査会当日の様子






 

審査員の皆様、お越しいただいたOB・OGのみなさま、お忙しい中ありがとうございました。
日月会建築賞を通してのみなさまと学生とのコミュニケーションは、短い時間ではありましたが双方にとって楽しく有意義な時間を過ごせたのではないかと思います。
来年度の日月会建築賞にも、たくさんのOB・OGのみなさまのご参加をお待ちしております。どうぞ来年も日月会賞建築賞へのご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。