第23回 日月会建築賞
2021年度
開催情報
開催日
2021年7月18日(日)
審査員
審査委員長
中川 幸嗣 | 35期/中川幸嗣建築設計事務所 主宰・第5回長尾重武賞 受賞 |
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審査員
船曳 桜子 | 32期/船曳桜子建築設計 主宰 |
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戸井田 雄 | 39期/美術作家・株式会社machimori取締役・Atelier&Hostelナギサウラ運営 |
田原 唯之 | 40期/美術作家 |
エントリー作品数
11作品
エントリー課題
小西・奥野スタジオ: | 「集積する構造によって複合施設を設計する」 |
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髙橋・針谷スタジオ: | 第1課題「グラデーショナル」 第2課題「都市の環境単位-武蔵新城」 |
菊池・三池スタジオ: | 「神宮前に作るストリートカルチャーの郷土資料館」 |
持田・平井スタジオ: | 「学びと仕事の共同体」 |
太陽賞受賞作品
大きな木の下で
広瀬 了 (持田・平井スタジオ)
受賞のコメント
この度は大変な状況の中、オンラインでの開催をスムーズに進めていただき、誠にありがとうございました。様々な視点から講評をして下さったこと、そして素晴らしい賞を頂けたことは大きな励みとなります。
今回、私が生態系のシステムを取り入れた建築というものを最後まで考えていくことができたのは、相談に乗って下さった先輩方や友人達、そして持田先生と平井先生の熱いご指導のお陰であったと実感しています。まだまだ至らない所はありますが,人の役に立つ建築をつくるため,今後とも勉強に励んでいきたいと思います。
満月賞受賞作品
継ぎ接ぎの市井
奥田 涼太郎 (持田・平井スタジオ)
受賞のコメント
この度は、多くの方々の意見を頂ける素敵な機会を頂き、また、このような賞を頂き大変嬉しく思います。今回の作品では、人口減少傾向にある松本市四賀地区において、小学校としての役目を終えた際に、建築機能の死を受け入れ、住民の手によって用途が変化してゆく小学校を提案しました。建築の在り方や、建築が地域に与える影響を深く考えるきっかけとなりました。また、様々なご意見を頂く中で、自分の強みや反省点が多く見つかり、今回の経験を今後の設計に生かせるように精進していきたいです。ありがとうございました。
三日月賞受賞作品
大きな屋根の下で。
吉川 布記 (持田・平井スタジオ)
受賞のコメント
この度は、私たちのために日月会建築賞を開催して下さりありがとうございました。
1年生の頃から憧れていたこの審査会で、このような素敵な賞を頂けたことにとても嬉しく思います。3年生になり、これまでの設計より専門的な知識や考察が必要になる中で、貴重なご意見をたくさん頂き、とても参考になりました。
私は子供の行動をメインにした設計をいつかしたいと考えていたので、今回の課題で子供たちが思いっきり遊べるような小学校を提案し、自分の中でのやりたいことにチャレンジできた課題でした。
これからの課題も様々な方からのご意見を参考にしながら楽しく設計していきたいと思います。
新月賞受賞作品
mass of air
福士 愛美 (小西・奥野スタジオ)
受賞のコメント
この度はこのような賞をいただきありがとうございます。たくさん頂いた意見は、作品のブラッシュアップだけでなく自らを見つめ直す良い機会になりました。また、たくさんの宿題を発見でき、あくまで中間地点として今後を見据える決意もできました。プレゼンを繰り返していく中で、設計のストーリーと楽しさが伝わったことが感じられ嬉しかったです。「空気の集積」についてはこれからも考え続けていきたいと思っています。
七夕賞受賞作品
shibuya flexible
大塚 歩 (小西・奥野スタジオ)
受賞のコメント
構造について深く考えた設計課題でした。
2年生までの課題では構造について正直あまりよく分からず、考えるべき要素の中で優先順位は低かったのではないかと思います。今回、3年生前期で小西・奥野スタジオの課題を選択したのは一番不足した分野であると感じたためです。建築と構造のバランスに重点を起くという課題設定のもと、2年生までとは全く異なる視点で建築を考え設計を進めることができました。視野の広がりを感じ、充実した前期課題だったと思います。小西さん奥野さんにはとても感謝しています。それから日月会で貴重な意見を下さった全ての方々にも感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
審査員評
審査委員長:中川 幸嗣(35期・中川幸嗣建築設計事務所 主宰・第5回長尾重武賞 受賞)
数年前卒業したかと思っていたら、あっという間に20年。今は遠い心の故郷(ふるさと)ムサビの地に立つことを心待ちにしていました。しかしながら、昨年に続き今年もコロナ渦という状況から、第23回日月会建築賞審査会はオンライン開催ということになりました。11のエントリー作品に対し、審査員やOBの方々は数十人。前半は全員で一つのプレゼンテーションを聞くのではなく、数十人の審査員を5人程度ずつグループ分けし、各発表者の5分間のプレゼンを聴いてまわり、コメントするというスタイルがとられました。結果としてプレゼンテーションは小規模で行われることとなり、発表者は審査員にコメントをスルーされるということがなく、異なるグループでコメントが重複していたとしても、それは一つの結果として、全員のコメントをくまなく聞くことができたと思います。その後審査を経て、後半はすべての参加者が一箇所に集まり、再度各作品への総括的な講評会が繰り広げられました。異なるグループ間での作品の捉えられかたの違いなどを感じることができたと思います。
学生時代を思い返してみると、今回のプレゼンテーションの前半にあったような多くの意見を聴ける機会は、そうそうなかったように思います。今回のような前半・後半式がオンライン由来のものなのか、実際の講評会の場合もこの様に行われる最近のスタンダードなのかは分かりませんが、不自由なご時世の中での、密度の濃い有意義な講評会だったと思います。準備してくださった日月会の皆様はじめ、4年生の皆様。ありがとうございました。
今回の発表者の三年生はじめ在学生の皆様は、コロナ渦という状況から授業がオンラインになって、先生や友人との交流が取りづらかったり、学内施設の自由な利用もままならないのかもしれません。そんな中ですが、学生時代の友人や先達、恩師との出会いは本当にかけがえのないものだったということが、後になると良く分かります。特にムサビは学生同士の連帯感や先生とのつながりも強い環境だと思いますので、そんな類稀なるムサビでの貴重な日々を是非充実させてください。過去の自分への戒めも兼ねて皆様へお伝えする次第です。
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○太陽賞コメント
生態学になぞらえ、建築を利用する人びと(教師・移住者・子供・ムラ人)が分類さ れて相利共生し、それらの生息圏やけもの道を探し出し、カタチにおこしてゆくという作業を行ったという作品。決して上から目線の概念的な印象を与えるのではなく、いい意味で上の生態学に関するエピソードはあくまで話の導入に過ぎないという印象を受けた。環境工学的な話題や、建築する材料などへの配慮も感じられ、話はもっともっと広がっていくのだろうという可能性を感じた。サブリミナル的に円のシンボルが散りばめられているようだったが、それに関してはテーマが大きいだけに印象が弱かったかもしれない。
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○満月賞コメント
どこかのヴァナキュラーな集落を彷彿させるような、身体的なスケールの建築が集合して一つの大きな建築を成している作品。可変的な集合体という特徴から、夏・冬や密・疎など状況に応じて形を変えやすい。状況に順応しやすいというのは今まさに必要なテーマでもあり、強い共感を覚えた。屋根の色を周辺環境からサンプリングし、パッチワークのように配置したということであったが、個人的には若干違和感を覚えた。建築を溶け込ませたい想いや、場所へのリスペクトがあるのかもしれないが、取捨択一は必要。もう少し違う形で表現できるはず。
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○三日月賞コメント
プレゼンボードの模型写真や特にスケッチ(パース)がとても上手に作られていて、計画内容を一望しやすい作品。作り込みすぎて結果見辛いということがなく、サラッと爽やかに見易い、親しみやすい印象でした。ただ模型写真の背景が高速道路や山の法面処理の写真など殺伐とした風景なのが計画の印象をドライにしてしまっていたのが少し残念だった。
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○新月賞コメント
クロワッサンの断面から発想を得たチャーミングで可能性豊かな作品。
平面形状までは非常に面白そうなプランなのだが、車麩ならともかく、立体的にクロワッサンの構造が活かしきれなかったのが惜しかったというのは皆の意見でした。模型のインテリア写真は泡の中にいるような感じがして好印象だった。
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○七夕賞コメント
神戸のポートタワーのような形のタワー外周部にスパイラル状の可変的設備空間兼立体街路が巻きついたタワーの計画。構造的にもただの円筒形より中間をくびれさせた方が強度もまし、同時に美しい。プレゼンボードの説明もわかりやすく、整理され秩序立てられたタワー計画となっている。プレゼン時に見せてもらった大きな模型がとても印象的で説得力もあった。スパイラル状の空間がガチャガチャと動き出し変形したり、屋上からビームを出したりしそうな気がしてならないのは私だけだろうか。
審査会当日の様子
今年も第23会日月会建築賞が開催されました。
このイベントは在学中の3年生の課題を日月会同窓生=審査員+同窓生が講評して上位3名+αを選出します。
例年武蔵美8号館4階にて学生に各自模型とプレゼンボードを展示してもらって、同窓生が見て回る、という体制でしたが、去年からのパンデミックにより去年に引き続きzoomでの開催となりました。zoomにより得られた利点は全世界から参加出来るという事です。という事で今回の審査委員長中川幸嗣さんは京都から、審査員の戸井田雄さんは熱海からのzoom参加でした。
例年は30人前後の学生が参加していましたが、今年は11人でした。
各学生が待機するブレイクアウトルームを審査員と同窓生と4年生のチームがぐるぐる周ります。発表する学生は画面共有をして発表しました。実際に向き合って話すのとは勝手は違うにせよ、少人数での質疑応答はかなり臨場感があったとおもいます。
表彰式の後は、通年は天平ですが、zoomにてアフターパーティーも開催されました。
僕の作品どこがダメでしたか?
こんなところが気になったよ、
これに対してはどう思ってる?
とか、
あれ、良かったけど最初どういう発想だった?
とか、3年生と同窓生の会話が繰り広げられて、日曜日の宵は更けていきました。
私個人としての感想は学生の発想ってやっぱり面白い!仕事を常にしていると出てこないようなアイディアが満載でさすがの武蔵美イズムを感じました。また、同窓生のアドバイスが皆様それぞれで、共感したり、そうなの?、と思ったり、思わず感動したりそっちも新たな感動と共感がありました。
来年、どの様な開催方法になるかわかりませんが、多くの同窓生に世界中から参加していただける事を願っております。
篠原 乃生子(25期・日月会執行部)