「世界美術大学学長サミット」に参加して

ムサビ創立80周年記念イベントの一つとして開催された「世界美術大学学長サミット」に参加してきた。(開催日:2009.10.31 私は日月会会長ということで招待された)

最初に,シカゴ美術館附属美術大学総長トニー・ジョーンズ氏による基調講演があり,次に以下のパネリストたち(敬称略)によるディスカッション(実際は順番にしゃべっただけ)が行われた。

1. シカゴ美術館附属美術大学総長:トニー・ジョーンズ 2.中国美術学院副院長:宋建明 3.弘益大学校美術大学学長:崔棟勳(棟は入力できない漢字) 4.ヘルシンキ美術デザイン大学学長:ヘレナ・ヒュバネン 5.ロンドン芸術大学副総長:ウィル・ブリッジ 6.東京藝術大学副学長:北郷悟 7.多摩美術大学学長:清田義英 8.女子美術大学芸術学部長:小倉文子 9.東京造形大学学長:諏訪敦彦 10.日本大学芸術学部長:野田慶人 11.武蔵野美術大学学長:甲田洋二

トニー・ジョーンズ氏の基調講演では,世界で起きている美術教育の危機と美術におけるデジタル化の功罪,クラフト分野の将来性とその期待など,大変面白く興味深い話題が次々と繰り広げられた。私にはまったく長い講演には思われなかったが,その後甲田学長がジョーンズ氏に公演時間が長かったこと(予定よりも長かったらしい)ばかりをちゃかし続けていたことにずっと違和感を感じていた。

次のパネルディスカッションでの内容をかなり乱暴に要約すると,世界同時不況による経済的打撃によって美術教育への予算配分や投資が中国を除く各国でますます削減されており,美術教育が単に表現のテクニックやその評価をすることだけではなく,「創造すること」や「表現を通してコミュニケーションを図る」といった人間の発育上極めて重要な部分を担う分野であるにもかかわらず社会的軽視に抗することができないでいるので、その現状を打開すべくここに集まった各大学が連携して美術教育の重要性を広く世界に発信していかなければならない・・といったことだったように思う。

その中で特に印象に残ったのは,多摩美の学長である清田氏(美術ではなく史学が専門)が,「私は,美術界の外野にいた立場で申し上げるが,日本の美術界は狭い!」と,机をバーンと叩く感じで言い放った言葉だった。それを聞いた私も「確かに,美術界は閉じてるよなー」と認めざるを得ないでいる。そして、その後の記念式典ではそういったこと(日本の美術界は狭い!ではなく)が共同声明として宣言された。(朝日新聞紙上に掲載されるとのこと)

ここまでのことが予定調和的に行われたことに,主催者であるムサビ大学関係者にとっては一定の達成感があったのかもしれない。関係者の皆さんには大変なご苦労があったことはよく分かる。しかし,聞いていた私にはどうしても次の疑問が浮かんでくる。

国内外の美術大学と連携をとって発言力を増すのはよいが,ムサビ内部の連携はとれているのか・・ムサビは少なくともその内部で開いているのかと・・

新しくできた2号館を見学させてもらって以来私は,ムサビ内部がもっとオープンに連携することで、例えば建築学科の学生もムサビが誇る他学科の工房を使えるようにならないものかと思うようになった。一部の先生方にそのことを申し上げる機会もあったが,その可能性は低いとしてすぐ話は終わってしまう。

ムサビでの教育に関わったこともない私には大学または各学科の教育システム等知る由もないので、この思いつきは単なる思いつきであるとして批判されるのかもしれない。しかし、そこにムサビケンチク独自の未来像を垣間見ることはできないだろうか・・

今回の創立80周年記念パネルディスカッションで宣言された内容が、絵空事ではない実感の持てる内容に進化していくためにも,学科同士の連携が図れるようまずはムサビ自身の内部改革に目を向けてほしいと思うのである。 
16期更田邦彦・・・長文でスンマセン

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